第6話:鍵を受け取るその日まで
はじめて家を建てる!第6話(最終回) ――家が「完成」した日、そして始まりの予感―― 完成間近。 この言葉を、 何度心の中で繰り返しただろう。 現場に通う回数は、 気づけば減っていた。 もう大きく変わることはない。 そう頭では理解しているのに、 それでも私は足を運んでいた。 何度も現場に立つ理由 クロスが貼られ、 床...
はじめて家を建てる!第6話(最終回) ――家が「完成」した日、そして始まりの予感―― 完成間近。 この言葉を、 何度心の中で繰り返しただろう。 現場に通う回数は、 気づけば減っていた。 もう大きく変わることはない。 そう頭では理解しているのに、 それでも私は足を運んでいた。 何度も現場に立つ理由 クロスが貼られ、 床が仕上がり、 照明が取り付けられる。 室内は、 もう「工事現場」ではない。 それでも私は、 壁の角を指でなぞり、 床に目線を落とし、 建具の開閉を何度も確かめた。 小さな傷が気になる 「ここ、少しだけ…」 言われなければ気づかないような、 本当に小さな傷。 それでも、 心配性の私は見逃せない。 担当者は、 嫌な顔ひとつせずにメモを取り、 「引渡しまでに直します」と言った。 その姿を見て、 胸の奥が少し軽くなった。 完了検査という最後の関門 検査の日の緊張感 完了検査の日。 建築基準法に基づく検査。 この検査を通らなければ、 家は完成とは言えない。 私は、 もう何度も確認した家なのに、 なぜか落ち着かなかった。 「もし、何か問題が見つかったら…」 そんな考えが、 また頭をよぎる。 「是正完了しました」の一言 数日後、 担当者から連絡が入った。 「検査、問題ありませんでした。 指摘事項も是正完了しています」 その言葉を聞いた瞬間、 胸の奥に溜まっていたものが、 すっと消えた。 不安が、 ようやく終わった。 引渡しの日 鍵を受け取るということ 引渡しの日。 テーブルの上に並べられた、 いくつかの鍵。 一本、 また一本。 それを受け取るだけなのに、 手が少し震えた。 「これで、この家はあなたのものです」 その一言で、 すべてが変わった。 建物から「我が家」へ 鍵を差し込み、 玄関ドアを開ける。 何度も見たはずの室内が、 この日は違って見えた。 もう、 誰かに許可を取る必要はない。 ここは、 自分たちの場所だ。 何もない家の中で 家具のない空間 引渡し直後の家は、 驚くほど静かだった。 家具も、 カーテンもない。 音が、 少しだけ響く。 でも、 不思議と寂しくはなか...